エグゼクティブ・サマリー
AWSとAzure全体で約3,000に上るクラウド・アカウントを管理するFactSet社では、信頼性の高いショーバック・プロセスとチャージバック・プロセスを構築して、エンジニアに実用的な情報を提供し、クラウド支出を最適化するために、透明性を高め、さらに詳細な洞察を得る必要がありました。同社は、IBM Cloudabilityの導入によって社内で開発したクラウド・コスト管理アプリケーションから高い実績を誇るソリューションに移行し、以下のような成果を得ることができました。
- クラウド支出の透明性を向上
- コストの最適化に向けた行動を取れるようエンジニアを支援
- 全共有リソースのコストを割り当て
- RDSの確約範囲が2倍に
- ユニット・エコノミクス達成に貢献
企業の概要
コネチカット州ノーウォークに本社を置くFactSet社は、金融データとソフトウェアを提供する会社です。1978年に創業した同社は、投資プロフェッショナル向けに特化したソリューションを提供しています。金融データや分析ツールの提供を通じて、投資プロフェッショナルによるビジネス上のクリティカルな意思決定をサポートしています。20カ国37拠点に12,000人を超える従業員を抱えるFactSet社は、8,200の組織と21万8,000人を超える投資プロフェッショナルにサービスを提供しています。
課題
FactSet社の中核を担うエンジニアリング・チームは、同社のソリューションを開発し、新しいアイデアをテストし、イノベーションを推進します。そこで、インフラストラクチャーやツールの導入障壁をなくすことが非常に重要です。クラウド・リソースへアクセスできるようになったことで、エンジニアリング業務のアジリティが大幅に向上しました。マイクロ・アカウント戦略の採用により、新しいアカウントを簡単に作成して、ガバナンスを遵守しつつ安全かつ迅速に作業を開始できます。クラウド環境は、現在約3,000のアカウントまで増加しました。そのほとんどがAmazon Web Services(AWS)にあるため、クラウド・コスト管理は非常に重要な一方、難しい業務にもなっています。
FactSet社でクラウド最適化担当バイス・プレジデント兼ディレクターを務めるHitesh Chitalia氏は、次のように述べています。「クラウド支出をより適切に管理するために、まずその支出を理解する必要がありました。データセンターでは、ハードウェアを新しく購入する際の費用は複数年にわたって減価償却されるため、購入した機器を稼働中のまま使用しなければ、そのコストは隠れたコストとなります。クラウド上で未使用またはアイドル状態のリソースにかかるコストは、最終的な収益に直接影響します。」
FactSet社では、この課題に対処するために専用のクラウドコスト管理ソリューションを独自開発しました。このアプリケーションにより、同社はクラウド支出データを収集し、各部門のコスト分布を把握し、財務レポートと運用レポートを作成できるようになりました。
このアプリケーションは支出データの分析には役立ったものの、いくつか欠点を抱えていました。たとえば、このアプリケーションは財務報告ツールとしては有用でしたが、クラウド支出削減に向けてエンジニアが具体的な行動を起こすうえで必要な透明性が不十分でした。また、このカスタム・アプリケーションには、社内の専任エンジニアによる継続的なメンテナンスと、新機能の開発が必要でした。
既存システムの限界と、エンジニアにより多くのデータを提供する差し迫ったニーズを考慮して、FactSet社は、より高い機能を豊富に備えるクラウドコスト管理ソリューションを探し始めました。
解決策
FactSet社は、自社のカスタム・アプリケーションに代わるソリューションを探すうちに、IBM Cloudabilityにたどり着きました。Chitalia氏は、Cloudabilityが競合製品と一線を画す要因は複数ありますが、FactSet社では、大量のデータをインポートして処理する必要があり、Cloudabilityは、特にその処理に必要な拡張性の点で際立っていたと言います。さらに、Cloudabilityにはより優れたUI/UXインターフェイス、より堅固なセルフサービス機能が備わるとともに、FactSet社のApptioエコシステム内の他のソリューションとの自然な統合が可能でした。
Chitalia氏は次のように述べています。「IBM Cloudabilityを一目見てすぐに非常に魅力的だと感じました。条件の大部分を満たしていたのです。クラウド課金システムを簡単に統合できたため、非常に簡単に導入し、運用できました。」
FactSet社にとって、Cloudabilityは導入が簡単でわかりやすいだけでなく、FinOpsとクラウド・オペレーションの改善に多くの面で役立っています。
成果
透明性が向上すると、エンジニアが行動を起こしやすくなります。
IBM Cloudabilityにより、Chitalia氏はあらゆるクラウド・アカウントからクラウド請求データをインポートして、支払人アカウントにリンクするだけでグループを維持できるようになりました。リンク後にCloudabilityがデータをインポートすることで、FactSet社はソリューションのマッピング機能を通じ、コストを各部門、部署、およびチームに振り分けられます。
Chitalia氏は次のように述べます。「データを入手したらIBM Cloudabilityでアカウントをマッピングするだけで、それらのアカウントと各部署のマッピングや、それらのアカウントがサポートする製品に取り組んでいる実際のエンジニアリングチームを維持できます。今では、データと実態を結びつけて、エンジニアリング・チームに担当業務を具体的に伝えることができます。」
Cloudabilityは、エンジニアが実際の支出を理解するのに役立つだけでなく、支出傾向に関する洞察と、リソースの最適化案も提供します。これにより、自社製のカスタム・アプリケーションから以前得ていたよりもはるかに多くの情報を得られるようになり、クラウド支出の最適化に向けて具体的な行動を取る意欲と実行力が高まりました。
共有リソースの割り当てに関するインサイトの質を高める
Cloudabilityにより、FactSet社は共有リソースのコスト要因をより詳細に分析することにより、組織全体のコスト削減につながる可能性のある意思決定を行う機会を各部門に与えています。
Chitalia氏は次のように述べます。「エンジニアリング・チームなど、各部門では共有コストとして各項目を確認できるため、そうした項目のコスト要因を知りたいと考えるようになります。それから、次のような疑問を持ちます。『コスト上昇の原因は何だろうか?ネットワーク異常?集中型ロギング・メカニズムへのロギングが非効率的なためだろうか?』IBM Cloudabilityがもたらす透明性により、各部門の関心が高まり、コスト削減に向けて何ができるのか知りたがっています。たとえば、ネットワークIO呼び出しを大量に行うアプリケーションは、共有ネットワークのコストを増加させます。こうした呼び出し回数を減らすようにアプリケーションが更新されれば、共有ネットワークのコストは減り、全員が恩恵を受けることになります。」
RDSの確約範囲が2倍に
Cloudabilityの導入前、FactSet社は自社のカスタム・アプリケーションが提供するスクリプトを使用してEC2とRDSのリザーブド・インスタンスを購入していました。しかし、新しいインスタンス・タイプが導入されるたびに必要なスクリプトのメンテナンスが行われなかったため、提供されたスクリプトの購入案には透明性がありませんでした。さらに、エンジニアやプラットフォーム所有者と情報を共有して、インスタンスがコミットメント期間の間維持されるかどうか簡単に確かめる方法もありませんでした。1年または3年のコミットメントを購入すべきなのでしょうか。
Chitalia氏によると、Cloudabilityによってコミットメントに関する推奨事項の可視性が高まり、利用期間を簡単に確かめられるようになったことで、特にRDSの総利用範囲が拡大し、最大限に割引価格を活用できるようになったとのことです。
同氏は次のように述べています「RDSの範囲が40%から90%に増えました。「IBM Cloudabilityを使用して、リザーブド・インスタンス(RI)が期限切れになる時期を確認して、RIが適用されたアカウントに前払いを割り当てられます。以前はできなかった操作ですが、非常に具体性を持てるようになりました。この例からも、IBM Cloudabilityが集中的に管理されているコストのショーバック・メカニズムに役立っていることがわかります。誰がRDSを使用しているかを確認して、その特定のアカウントの実績にRIを直接適用できます。」
財務部門と事業部門の連携を強化
FactSetのFinOpsチームは、長年にわたって財務チームと良好な関係を築いています。Cloudabilityの採用により、その関係は発展し、成熟しました。財務チームとFinOpsチームは、用語やコストの合理化と配分の方法について合意し、連携をさらに強化しています。
Cloudabilityによって透明性が向上したことで、FinOpsは部門リーダーやエンジニアリング・チームとの連携を強化できました。
Chitalia氏は次のように述べます。「エンジニアリング・チームのリーダーは、私たちが提供する透明性を高く評価しており、さらなる強化を希望しています。私たちは、経営陣が月次のクラウドレビュー会議に直属の部下を参加させたいと考えるまでに成熟しました。これは経営陣がデータを信頼しており、行動の機会を確認できるためです。経営陣はまた、報告を歓迎しており、さらに多くを求めています。実際、経営陣はFinOpsチームに対して、どの支出を最適化できるかを直接話しに来るよう頻繁に依頼してきます。」
ユニット・エコノミクス達成へ
Cloudabilityは透明性の向上を通じて、FactSet社が継続的にFinOpsを成熟に導き、クラウド支出をさまざまな方法で最適化するよう支援してきました。具体的には、クラウド・サービスの適正化、演算における割引の最大化、未使用リソースおよび孤立リソースの自動削除の導入に関する推奨事項などです。おそらく最も重要なことは、エンジニアにこれまで入手できなかった意思決定やクラウド支出の最適化に役立つ貴重な情報を提供したことです。
Chitalia氏によると、IBM Cloudabilityは、ユニット・エコノミクスの達成という、同社のFinOpsに関する取り組みをステップアップするために必要な、強固な基盤となっています。
同氏は次のように述べます。「FactSetが成熟し、クラウド・コストを個々の製品に割り当てられるようになるにつれ、製品に関する意思決定にユニット・エコノミクスが重要になってきます。今はまだその段階にありませんが、近いうちに達成できると期待しています。」
FactSet社は、自社のカスタムツールと比較して、FinOpsのあらゆる取り組みの価値を高めることができました。パーソナライズされて提供されるIBM Cloudabilityのデモをご予約ください。お客様の組織の透明性を高め、クラウド支出を最適化する方法をご覧いただけます。