エグゼクティブサマリー
日本国内で大規模アジャイルフレームワーク「Scaled Agile Framework (SAFe)」の導入支援にいち早く取り組んできた TDC ソフト。同社のコンサルティング本部は、自社でも SAFe を実践しています。その中で見えてきた課題が、プロジェクトを Excel で管理する手間と、蓄積したデータを活用できないことでした。その解決に向け、同本部は SAFe の活用領域でアジャイルプランニングの SaaS プラットフォームである IBMTargetprocess を採用。Excel での管理から脱却し、ツールにデータを蓄積して可視化と振り返りを効率的に行うとともに、実践で得られたノウハウをお客様の課題解決に活かす取り組みを進めています。
TDC ソフトは独立系システムインテグレーターとして、60 年以上にわたり日本産業の発展に貢献しています。1962 年の創業以来、銀行、保険、クレジットなどの金融業界をはじめ、官公庁、エネルギー、製造、流通など幅広い業種のシステム開発を手掛けてきました。「世の中をもっと Smart に」というパーパスのもと、一歩先の未来に向けた先見性を磨き、卓越した開発技術とサービスを提供することで、お客様の唯一無二の存在となることを目指すシステムインテグレーション企業です。
システムコンサルティングから設計、開発、ハードウェア・ソフトウェアの選定・導入、運用、保守までトータルにサポート。また、積極的に最新技術を活用し、アジャイルサービスやコンサルティング領域にも注力しています。SAFe Practice Consultant(SPC)認定資格を取得した社員も多数在籍。2025 年 10 月よりトレーニングとコンサルティングを統合した「SAFe パッケージ」の提供を開始し、導入から定着まで包括的に支援しています。
課題
急速に変化する時代を勝ち抜くために、アジャイルの考え方や手法の重要性が一層高まっています。組織全体へアジャイルを展開するために体系化された方法論が、エンタープライズ・アジャイル・フレームワークである SAFe です。大規模ソリューション開発や、複数のアジャイルチームによる開発などのシーンで活用が進んでいます。全世界で約 2 万社が採用し 200 万人以上のトレーニング実績を有しており、日本でも採用が加速しています。
SAFe の採用が拡大する理由について、SAFe 導入コンサルティングで豊富な経験と知見を持つ、TDC ソフト コンサルティング本部 コンサルティングサービス部 SAFe Practice Consultant 谷川 学氏は話します。
「小さなチームでは容易だったアジャイル開発手法が、複数チーム、部門などに拡張するほどに複雑化します。また、アジャイルを大規模に行う場合、マネジメントや経営層の判断が必要です。キャパシティやリソースの管理に加え、個別のアジャイルチームと管理層の間で生じる認識のギャップも課題となります。これらを解決するために、ゼロから取り組むのは現実的ではありません。SAFe が提供する成功モデルや実証済みロードマップ、ガイダンスに基づき実行することで、アジャイルチーム、ビジネスユニット、組織全体へアジャイルを展開できます」
TDC ソフトは日本国内でいち早く SAFe に取り組んできました。2019 年から SAFe Gold Partner として SAFe 認定プログラム・トレーニングを開催し、多数の受講者実績があります。2025 年 10 月には、SAFe の導入から定着まで包括的に支援する「SAFe パッケージ」の提供を開始しました。
SAFe の実践には、知見やノウハウが必要です。TDC ソフトのコンサルティング本部では、自ら SAFe を導入し、より良いサービスの提供に向けた改善とともに、実践で培ったノウハウをお客様に還元しています。社内実践を通じて見えてきた課題が、プロジェクトを Excel で管理する手間と、振り返りなどにデータを活用できないことでした。
コンサルティング本部では、本部長を最高責任者とし、組織として SAFe を適用しマネジメントを行っています。SAFe のフレームワークでは、1 年単位のエピック(組織が目指すゴール)、3 ヶ月単位のフィーチャー(エピックを実現するために必要な機能)、2 週間単位のユーザーストーリー(要件)、タスク(作業)といったアジャイル開発単位に落とし込んでいきます。Excel によるプロジェクト管理の課題について谷川氏は指摘します。
「SAFe では、チームごとの仕事の結果をビジネスバリューで測定します。『この仕事(目標)を達成した結果、どれだけビジネスの価値が出たのか』を 10 段階で評価します。コンサルティング本部ではケーパビリティ、サービスソリューションやトレーニングを上手く行えたかを数値化しています。課題は、改善に向けた振り返りを行う際に、Excel データでは多くの手間と時間を要することです」(谷川氏)
SAFe のトレーニングを実施している同社 コンサルティング本部 コンサルティングサービス部 SAFe Practice Consultant 鳥海 阿理紗氏は、お客様にも同様の課題が見受けられると話し、こう続けます。「Excel で管理することに手間がかかり、SAFe の本質であるビジネスバリューをいかに作っていくかという、本来考えるべきことに時間を活用できていないのが現状です。SAFe による効果を最大化するためには、Excel 管理から脱却し、そこで創出した時間を使ってビジネスバリューの向上に意識を傾けることが大切です」
IBM Targetprocess を活用した取り組み
2025 年 12 月、同社 コンサルティング本部は、SAFe の実践における Excel 管理の課題解決やデータ活用に向けて、SAFe の活用領域でアジャイルプランニングの SaaS プラットフォームである IBM Targetprocess(以下、Targetprocess)を導入しました。採用のポイントについて谷川氏は話します。
「Targetprocess は、SAFe に準拠しており親和性が高いというのが前提です。採用においては、SAFe を実践する中で蓄積したデータをいかに活用できるかを重視しました。これまでは Excel を使って記録に残すだけで、それを活用するのが困難でした。Targetprocess を利用することで、『去年は、これだけのキャパシティでこういう仕事の成果があった。今年はもっと成果を高めるためにどうするべきか』といった、改善に向けた振り返りができます。時間の経過とともにビジネスバリューが積み上がり、組織としてのパフォーマンスが明確になります。また、Excel による管理に要していた時間を有効活用できるメリットも大きいと思います」
Targetprocess によりプロジェクトがどのようなビジネスバリューに結びつくのか、といった意識づけにつながると鳥海氏は指摘し、説明します。「ユーザーストーリーやタスクに落とし込んだ段階で、目の前の仕事を進めることだけに意識が集中しがちです。ビジネスバリューの観点では、何のためにこの仕事をしているのか、常に念頭に置くことで仕事の質も変わると思います。Targetprocess では、エピック、フィーチャー、ユーザーストーリー、タスクが可視化され、1 つの画面で見ることができます。自分たちのタスクの状況を確認する時に、お客様に提供する価値を示すエピックを見ることで、その仕事が果たす役割を再認識でき、納得感が得られます。アジャイル開発の大規模化に伴い関わる人数が増える中で、同じ目線に立つためにはエピック、フィーチ
ャーを共有できる状況を作り出すことが必要です」
TDC ソフトが Targetprocess に注目した背景について、谷川氏は次のように話します。「SAFe は、初期のバージョン 1.0 では主にアジャイル開発を大規模に適用するための枠組みとして位置づけられていました。しかし、大規模開発を進める中で、現場レベルの工夫だけではなく、優先順位や投資判断など経営層の関与が不可欠であることが明らかになり、バージョンの進化とともにビジネスや経営の視点が取り込まれてきました。現在のバージョン 6.0 では、IT や開発部門にとどまらず、経営層を含めた組織全体の変革を支えるフレームワークとして位置づけられています。アジャイルで企業を変えるという潮流に Targetprocess は合っていると思います」
SAFe 6.0 による組織改革を実現していく上で、コンサルティングも目線を上げなければならないと谷川氏は話します。「日本でも SAFe の認知度が高まってきており、IT 部門だけでなく経営企画部門や経営層からご相談をいただくケースも増えています。『私たちも SAFe を実践しています』とお伝えする際に、『Excel で管理しています』では時代遅れという印象をもたれかねません。『SAFe と親和性の高いプラットフォーム Targetprocess で可視化し管理しています』と言うことで、データドリブン経営の実現にも寄与できることをアピールできます」(谷川氏)
■管理者も現場も共通のデータを見ながら判断
限られたキャパシティやリソースで業務を遂行するためには、タスクに優先順位を付けてキャパシティやリソースを振り分けることが必要です。「SAFe では、個人の裁量ではなく、組織的に優先順位を意識してプロジェクトを進めていくため、働き方改革にもマッチしています」と谷川氏は話し、こう続けます。
「SAFe では、進めるか変えるかを 2 週間単位で見直していきます。これまでの Excel に よ る 管 理 では 、 優 先 順位 の 判 断 とな る 情 報 を 可視 化 す るこ とは 困 難でし た。 Targetprocess により、管理者も現場も共通のデータを見ながら判断できるため、柔軟かつ迅速に選択と集中が行えます。また、各チームが優先して取り組んでいる仕事も一目瞭然です。従来は、いちいち聞かなければわかりませんでした。コンサルティング本部でも、互いのプロジェクトを可視化するために活用しています。現場も管理者も同じ情報を共有できるため、『ここはこうすべき』といった意見交換もスムーズに行えます」(谷川氏)
IBM Targetprocess:組織の戦略目標を階層的に構造化し、測定可能な成果として Key Result を紐付け、戦略の達成度合いを定量的に可視化
今後の展望
TDC ソフトは、SAFe パッケージと合わせて Targetprocess の提案・導入支援を行う予定です。「コンサルティング本部では、SAFe の実践において Excel で行っていたことを Targetprocess に置き換えています。初年度で運用を進め、継続的に活用しながら振り返りなどに役立てていきます。社内実践で蓄積した Targetprocess のノウハウをお客様に還元するとともに、効果を実証し、提案に説得力を持たせたいと思います」(谷川氏) SAFe 導入では、日本独特の企業文化への配慮も重要なテーマです。「すり合わせや阿吽の呼吸ではなく、言語化されているというのが SAFe の特長の一つでもあります。組織が拡大し、関わる人や役割が増えるほど、暗黙知に頼らない共通理解の仕組みが必要になります。共通言語という観点でも、Targetprocess で可視化する意義は大きいと考えています」(谷川氏)
SAFe は、従来型のアジャイル開発のフレームワークとは異なり、ビジネスコンテキスト(文脈)で捉えるべき方法論です。その観点でも、Targetprocess は SAFe のプラットフォームとして適していると谷川氏は話し、こう続けます。
「IBM は、IT ファイナンス管理のプロセスを高度化する方法論 TBM(Technology Business Management)を実践するためのツールである IBM Apptio(以下、Apptio)を提供しています。SAFe が浸透すれば、コストも含めて IT マネジメント全体を把握したいという経営層のニーズが高まります。それに応えるのが、Targetprocess と Apptio の組み合わせです。コンサルティング本部はこれらの製品を活用し、お客様のビジネス成長に貢献していきたいと思います」
左:TDC ソフト株式会社 コンサルティング本部、
コンサルティングサービス部 SAFe Practice Consultant 谷川 学 氏
右: TDC ソフト株式会社 コンサルティング本部、
コンサルティングサービス部 SAFe Practice Consultant 島海 阿理紗 氏