TBM とは何か?Technology Business Management の概要

TBM とは、CIO、CTO、CFO、およびチームにおける意思決定のためのバリュー マネジメント フレームワークです。Technology Business Management は、テクノロジー ビジネスを管理するために必要なツール、プロセス、データ、人を定義するものです。

1 万人を超える CIO、CTO、CFO およびリーダーで構成されるコミュニティである Technology Business Management Council において開発された TBM は、銀行からヘルスケア、製造業から政府機関まで、成熟度や規模を問わず、あらゆる業界の企業で導入されています。

TBM による IT 価値の測定

多くの組織で、IT の価値を測るのに、支出指標を用いるところから取り組み始めます (そのまま測定方法を変えていないケースも見られます)。  IT予算に対する実績値全容を把握することはできますが、本来はそれはゴールではなく、さらにその先の分析を進めるためのスタートにすぎません (例: 差異の原因は何か?どのコストセンターが異常値を出しているのか?どの領域のITの最適化が不十分なのか?等)。

組織によっては、財務データとオペレーション データを組み合わせ、より豊富なインサイトをもたらす計算指標を用いている場合もあります。  IT ファイナンスは企業財務とは別の目線で、CMDB、プロジェクト リスト、IT 資産データベース、サービス デスク システムから得たデータを IT の観点から階層化します。

IT は、従来型オンプレミスと新たなクラウドベース テクノロジーの両方をカバーする、IT 支出の管理手法を評価、最適化し、オペレーション化しなければなりません。

IT の価値測定は、指標駆動型のアプローチですが (アプリと IT の TCO  等)、その結果として、主にクラウド ソリューションに由来するトレードオフ、IT の複雑さ、変動支出に関してのビジネスとの対話における変化が顕著になっています。

そこで、TBM が重要になりました。

TBM: 対象分野

TBM は、初期は Cisco、JPMorgan Chase、Microsoft、Mastercard、HPE、Red Hat といった「テクノロジー企業」に多く取り組まれましたが、今では、銀行からヘルスケア、製造業から政府機関まで、成熟度や規模を問わず、さまざまな業界の企業や組織が導入しています。テクノロジーの重要性が高まり、あらゆる企業がテクノロジー企業になりつつあります。IT アプリケーションから、顧客にもたらされるデジタル テクノロジーの価値はますます拡大しています。

TBM により、データに基づく意思決定を促進し、あらゆるテクノロジー投資のコスト、価値、品質を管理、計画、最適化できます。

TBM フレームワーク

Technology Business Management の導入は、あらゆるテクノロジー投資のビジネスとの整合性を高めるため、まずは財務基盤を強化し、フレームワークの確立を目指すことが理想です。

図 1.TBM フレームワーク

基本的な財務ベースラインから開始してコミュニケーションやチャージバック機能を開発し、更に、事業の柱となる専門分野を含めていくこともできます。

クラウドリソースの最適化もモデルの一部ですが、膨大なクラウド データの集約、並替え、カテゴリ分類を行う複雑性は、TBM に取り組む企業にとっても新たな課題となっています。

TBM タクソノミー

TBM では、テクノロジー用語とビジネス用語を統一し、IT 部門と利用部門の対話を成立させるための共通言語が必要になります。IT サービス、タワー、コスト ソースに関する階層型タクソノミーは、IT、財務、利用部門の各リーダー間の連携を促進します。TBM では、コスト ソース、テクノロジー、IT リソース、アプリケーション、サービスを説明するための TBM タクソノミーを提供しています。

TBM Council は、TBM 分野の発展に特化した NPO の専門家組織で、TBM タクソノミーの維持と管理に取り組みます。

TBM モデル

TBM モデルでは、データに基づく手法が必要になります。その手法を用いて、ソースから用途へと、コストとリソースの利用状況をマッピングして割り当てます。さらに、レポート、分析、指標により、IT のビジネス価値に関する対話を強化します。

TBM において、コスト配分は不可欠です。IT における全負担コストと品質を可視化して信頼を高めるには、TBM モデルを通じて IT コストを正しく割り当てられている必要があります。  TBM の基礎となるのは、信頼性の高いデータです。データ品質の信頼性が揺らぐと、ステークホルダーはそのデータの根拠を疑うようになります。

図 2.TBM モデルでは、総勘定元帳からの実際のコストをコスト プール、IT タワー、アプリケーション、サービス、利用部門にマッピングします。

一般的な割り当ては、6 つのカテゴリに則ります:

  1. 均等割り当て
  2. 手動での比率配分
  3. 手動での重み付け
  4. 共有費用の直接支出重み付け
  5. 消費量ベース
  6. 多次元での割り当て

TBM 指標

Technology Business Management のビジネス価値に対するトップダウン アプローチは、膨大な運用詳細情報を適切に整理します。

アプリケーションの合理化は、多くの TBM 導入において重要なイニシアチブです。まず、アプリケーションをセグメント化し (収益ドライバー、収益サポーター別、KTLO 等)、各セグメントで取るべきアクションを判断します (投資してパフォーマンスを最大化する、パフォーマンスとコストを最適化する、コストを最小限に抑えて SLA を満たす等)。

アプリケーション合理化成功の KPI は、専門技術が必要であるわけでも、特に複雑でもありません。

アプリケーション合理化イニシアチブを成功に導くには、ポートフォリオを縮小し、重複するビジネス機能を排除し、アプリケーション支出を削減します。インフラストラクチャやオペレーションに関する経験の有無にかかわらず、この指標は誰でも理解できます。

ただし、アプリケーション コストのベースライン化は容易ではありません。アプリケーション全体支出を削減したという根拠として、合理化前のコストを把握しておく必要があります。  これが初めから把握できていることは少ないでしょう。

TBM タクソノミーで構築された IT コストモデルと適切なコスト割り当て (オンプレミス インフラからアプリケーションやサービスに至る GL からの割り当て) は、信頼できるビジネス価値指標となるために前提として必要です。

アプリケーション合理化はビジネス価値に軸をおいた議論ですが、そのためには TBM 内にオペレーションと財務の詳細情報を取り込む必要があります。

TBM は、KPI を 4 つのカテゴリに整理します:

  • コスト効果 KPI は、ITが品質を保ちながらサービスコストの効率を継続的に改善させるための基準です。
  • ビジネスアライン KPI は、ビジネス価値を最大化するために、IT がその時間とリソースを、サービスやアプリケーション、テクノロジー、ベンダー等毎に把握できるよう用いられます。
  • イノベーション投資 KPI は、IT とビジネス パートナーがプロジェクト支出を適切なレベルで管理し、コラボレーションできるように用いられます。
  • エンタープライズ アジリティの KPI は、よりアジャイルな IT コスト構造の開発を促し、効果的な意思決定を加速します。

これらのカテゴリを補強するために、10 個の具体的な指標があります。

  • 財務上の基本情報
    • IT の支出と計画 (OpEx と CapEx の差異)
    • アプリケーションとサービスの合計コスト
    • インフラストラクチャの単位コストとターゲット/ベンチマーク
  • デリバリー
    • スケジュール、予算、仕様が予定通りに進んでいるプロジェクトの比率
    • ビジネス向けサービスの SLA 満足度
  • イノベーションとアジリティ
    • ビジネスの維持、成長、変革という目的別の IT 投資比率
    • 顧客向けイニシアチブに対するプロジェクト支出の比率
  • ビジネス価値
    • ビジネス向けサービスの顧客満足度
    • 利用部門による IT 支出
    • ビジネス イニシアチブによる IT 投資の比率

TBM は、総勘定元帳データ (人件費、ライセンス、収益等)、オンプレミス運用データ (BMC TrueSight 等)、プライベート クラウド (vRealize 等)、月次のクラウド料金も含め、あらゆる IT コストを可視化させます。

TBM とユニット エコノミクス

Technology Business Management は、IT の費用負担配分と適切なユニット エコノミクスを実現します。

ユニット エコノミクスにより、ある利用部門から得られる収益とそのサービス関連コストを判断できるようになり、最終的に支出に対してのビジネス価値が明らかになります。

財務とオペレーション指標はここでは置いておきましょう。組織は、IT コスト、品質、価値をビジネス軸の KPI に可視化できる指標を望んでいます (たとえば、旅行会社であればコスト/マイル、ヘルスケアであればコスト/病床、保険会社であればコスト/請求、等)。

ユニット エコノミクスは組織独自のものになり、特定業種でも同じものを使用できるような北極星のような指標があるわけではありません (例えば、病院では入院治療と外来治療に応じて KPI が異なり、輸送会社では輸送方法別に異なるコストが発生します)。

TBM に特化したシステム

TBM は、一度運用が始まると拡張できなくなり、継続的に膨大な作業が必要になります。

プロセスが複雑すぎてサポートできない場合、組織はサポートできない論理的根拠をリバース エンジニアリングします。新しい IT 運用モデルが拡大するにつれてますます複雑になっていますが、イノベーションとアジリティは向上していきます。

ステークホルダーがガバナンスを最も必要としている段階で、組織は「複雑すぎる上に対応する時間もない」という理由でプロセスを拒否しがちです。

同じ手作業によるステップを続けると、改善が進まず、膨大なサイクルに疲弊し、ビジネス パートナーはこの取り組みに価値を見い出せなくなります。

TBM は、マニュアル作業を減らして自動化の比率を高め、変化に合わせて拡張しやすく、且つ堅牢なものでなければなりません。

TBM を実現するシステムに必要となる条件は、次のとおりです:

  • 最小限の労力で、ほぼすべての財務またはオペレーション ソースからデータを取り込み、集約、標準化できること
  • 標準コスト モデルを通じて、コスト割り当てと利用状況の追跡に必要な財務情報を取得できること
  • 時間とともにデータ品質が改善されること
  • セルフサービスのビジネス インテリジェンス機能と、信頼できる単一情報源となること

TBM の自動化フレームワーク

TBM カウンシルのテクニカル アドバイザーである Apptio は、CIO や IT リーダーにとって差迫ったニーズを満たすソリューションを提供します。

IT 予算策定、差異分析、予測を中心とする IT 財務管理のベスト プラクティスを確立します。予測を自動化し、人件費や資産、ベンダー、クラウドに関する支出インサイトを引き出し、シナリオを分析して支出判断を改善します。

オンプレミス インフラからクラウドに移行することより、クラウドとハイブリッド リソースを最適化します。ワークロードの移行と最新化を管理し、ショーバックとチャージバックで消費量を改善します。

単一ソリューションで、ベンダー ポートフォリオ全体の支出を継続的に最適化します。ベンダーや請負業者の分類と統合、ベンダー コミットメントの管理、利用部門への請求割り当てを行います。

アプリケーション ポートフォリオ TCO を測定し、コストの可視性を改善して、ポートフォリオを最適化します。リソース投資対象の絞り込み、優先順位付け、部門別の利用状況の測定を行います。

プロジェクトおよび製品全体での新規投資計画を最大化し、ポートフォリオのコストと価値を把握します。プロジェクトや製品に投資されたリソースを可視化することで、投資の優先順位付けを行うことができます。

ビジネス部門のサービス消費の影響から、テクノロジー投資とビジネス価値を結びつけます。利用部門ごとの消費状況を追跡し、コストとビジネス価値に作用する要素を明らかにし、適切なチャージバックを通じてコストを回収します。

詳細はこちら: 新しい IT 運用モデルのための TBM

Technology Business Management への統合型アプローチ

Apptio は、統合プラットフォームを介して網羅的な 6 つの機能を提供する、市場で唯一のプロダクトです。Apptio のエンタープライズ マネジメント プラットフォームにより、以下のメリットが得られます:

  • 総勘定元帳、固定資産データ、サービス管理データ (ServiceNow) と既存財務システムを接続するコネクターを用いて、ほぼすべての財務ソースや業務ソースからデータを取得、集約、標準化するため、最小限の工数で、スピーディに実装できます。
  • 業界標準のコスト モデルの Apptio TBM Unified Model™ を活用して、コスト配分と利用状況のモデル化に必要な財務情報を取得できます。
  • データ品質の経時的な改善を支援するパワフルな機能を有し、TBM だけでなく、サイバーセキュリティや資産管理などの基になるプロセスにも効果をもたらします。
  • セルフサービス ビジネス インテリジェンスでステークホルダーをサポートし、組織の誰もが同じ根拠に基づいて意思決定できるようにします。

さらに、Apptio には TBM から迅速に価値を引き出すための重要な機能もあります。

  • マシン ラーニングにより、GL データを即座にコスト プールにマッピングし、構成の迅速化、データ標準化、カテゴリ分け、マッピングを自動化します。
  • プロアクティブ インサイトにより、Apptio コミュニティ全体から集約した情報とベストプラクティスを自動的に示し、最適化機会を明らかにしてトラックも行います。
  • インタラクティブ ベンチマーク データでは、同業他社とのコスト比較を適切な頻度で行うことが可能です。

Apptio は 独自の包括的システムを提供し、お客様のテクノロジー ビジネス マネジメントを支援します。企業財務情報からインサイトを引き出し、ビジネスの成功に必要となる IT 運用モデル変革を実現します。